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財産分与で得た財産に税金はかかる?贈与税や所得税の申告・支払いは

この記事で分かること

  • 「贈与税」とは財産をもらう側に課されるもので、「譲渡所得税」とは財産を譲り渡す側に課される税金のことをいう
  • 離婚における財産分与では、基本的に「贈与税」はかからないが、「財産分与」の意味合いや内容で例外的に課税される場合もあるので注意が必要
  • 財産分与では財産を渡す側にも「譲渡所得税」がかかるが、「譲渡所得」自体がなければ支払う必要はなく、賢く特例を適用して特別控除を受けることがおすすめ

離婚における「財産分与」とは、夫婦で協力して形成・維持してきた財産を分割することです。これに伴い、財産をもらう側、財産を渡す側に、各種税金が課税される場合があります。税金との関係につき、最初に代表的な税金の説明、次に「財産をもらう側」と「財産を渡す側」に分けて、実際にどのような税金が課税されるのかを解説します。

財産分与にもかかわる贈与税や譲渡所得税とは

離婚における財産分与に関係してあまり知られていないのが、各種税金の取り扱いです。税金には様々な税目別がありますが、ここでは関係する税金の基礎知識(国税のみ)を、最初にまとめて整理します。

贈与税の基礎知識

財産分与の際によく耳にするのが、「贈与税」です。民法には、「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」(民法549条)と規定されています。この「無償で財産を与える行為」に対して「贈与税」という税金が課されるのです。

ここで注意すべきは、「贈与税」は「財産をもらう人」に課されるものだということです。無償で財産をもらう代わりに、ある一定の金額の贈与税を支払う必要があるわけです。

ただ、贈与税はすべてにかかるわけではありません。1年間(1月1日~12月31日)にもらった財産には、基礎控除額の110万円が設定されています。つまり、年間にもらった財産の合計額が110万円を超えた場合、超過部分にのみ贈与税がかかり、110万円以下なら課税されません(贈与税の申告も不要)。

申告と納税は、財産をもらった人が、財産をもらった年の翌年2月1日から3月15日の間に行う必要があります。

譲渡所得税とは?

「譲渡所得税」とは、土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの財産を、譲り渡すことで生じる「所得」に対して課される税金です。

相手側が支払う代金により生じた「利益」に、課税されるというイメージです。つまり、「贈与税」とは逆で、「財産を譲り渡す人」が支払わなければならない税金といえます。

具体的には、以下の計算式で、課税対象の「譲渡所得」の金額を算出します。
収入金額 ―(取得費 + 譲渡費用)― 特別控除額 = 「譲渡所得」

※収入金額とは、通常土地や建物を売ったことによって買主から受け取る金銭の額のこと
※金銭以外の物や権利で受け取った場合には、その物や権利の時価が収入金額となる
※特別控除額は、短期譲渡所得と長期譲渡所得の合計で50万円まで

なお、土地や建物の譲渡による所得は、給与所得など他の所得とは合計せずに、分離して課税されます。財産を所有する期間によって、以下の通り課税される税率は分かれます。

  • 長期譲渡所得(所有期間が5年以下の財産の場合)  15%+住民税5%
  • 短期譲渡所得(所有期間が5年を超える財産の場合) 30%+住民税9%

※別途、復興所得税2.1%課税あり

ワンポイントアドバイス
離婚における「財産分与」に関係があるのは、「贈与税」と「譲渡所得税」です。一般的に、「贈与税」は財産をもらう側に課され、「譲渡所得税」は財産を譲り渡す側に課されるものだといえます。税金に関してもっと詳しい内容が知りたい方は、国税庁や各都道府県の税務署の窓口などに問い合わせすることをおすすめします。

財産分与を得る場合に支払う贈与税などの税金

それでは、「財産分与」で財産をもらう場合、特定の税金を支払う必要があるのでしょうか。先ほどの「贈与税」など気になるところです。ここでは、財産分与の意味合いから、「財産をもらう側」と「贈与税」など税金との関係を考えていきます。

財産分与の意味合い

財産分与とは「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」(民法768条)ことを根拠に、これまで夫婦で協力して築いてきた財産を分けることをいいます。

財産分与には、清算的側面があります。形式上共有名義や夫婦の一方の名義でも、夫婦が協力した結果の財産であれば、離婚に際してその財産も清算すべきとの公平の見地の考え方です。他にも離婚後の自活を支える扶養的側面や慰謝料的側面も持ち合わせる場合もあります。

なお、財産をどのように分けるかは、当事者間の協議で自由に決めることができます。合意に達しない場合は、調停や審判で決することになりますが、一般的には1/2の割合での分与とすることが多いようです。専業主婦であっても、財産の形成や維持に貢献していたと判断されるからです。

実質的な貢献度合いを判断する困難さから、回避して折半という形で折り合いをつけた結果と解されています。

贈与税との関係

それでは、「財産をもらう側」と「贈与税」との関係をみていきましょう。

基本は贈与税を支払わなくていい!

離婚による財産分与の場合、原則、贈与税はかかりません。前項の通り、財産分与は単純な「贈与」ではなく、夫婦の財産を清算する側面があるからです。

例外的に贈与税を支払わなければならない場合とは?

ただ、清算的側面が薄れる場合、つまり、結果的に単純な「贈与」とほぼ変わらない場合は、贈与税がかかるとされています。
具体的には以下のような場合です。

  • 財産分与として渡された財産の額が、結婚生活の中で夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮しても、なお多過ぎる場合
     ※この場合は、財産分与として渡された財産のうち、「多過ぎる部分の財産」に「贈与税」がかかることになります。
  • 離婚が「贈与税」や「相続税」を免れるために行われたと認められる場合
     ※この場合は、財産分与として渡された「財産すべて」に「贈与税」がかかります。

特別控除は知っておくべき! 賢い節税対策を

財産分与として渡される財産が多過ぎれば、「贈与税」を支払わなければならない場合があります。その際に、知っておくべき「特別控除」をご紹介します。

夫婦の間で居住用の不動産を贈与した時の配偶者控除

婚姻期間が20年以上の夫婦の場合、居住している不動産、又はそれを取得するための金銭の贈与であれば、基礎控除110万円に加えて、最高2000万円まで配偶者控除ができる特例があります。ただ、「夫婦」となっていますので、離婚前に行う必要があります。

なお、特例を受けるための適用要件は以下となります。

  • 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
  • 配偶者から贈与された財産が、居住用不動産であること又は居住用不動産を取得するための金銭であること
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産又は贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること

参考リンク:国税庁

分与された財産が不動産の場合は注意!不動産取得税との関係

次に財産分与として渡された「財産」が、土地や建物などの「不動産」の場合はどうでしょうか。通常であれば支払う必要のある不動産取得税との関係をみていきましょう。

不動産取得税は地方税! 財産分与の意味合いで変わることに注意

土地や家屋の購入や、家屋を建築するなどして「不動産」を取得すれば、「不動産取得税」が課税されます。「不動産取得税」は国税と異なり、都道府県から課される地方税です。

登記の有無は関係なく課税され、有償・無償を問わず、取得すれば課税対象となります。(※相続による取得の場合には課税なし)

税率は下記の通りです。

  • 居住用の場合…固定資産課税台帳に登録の不動産価格から3%の金額
  • その他の目的で使用する場合…固定資産課税台帳に登録の不動産価格から4%の金額

それでは、離婚における「財産分与」で「不動産」を取得した場合、もらった側に課税がなされるのでしょうか。

「財産分与」が清算的側面の意味合いであれば、もともと自己のものも含めた「夫婦の財産」を分けるだけなので、自分のものに変わりなく「取得」とはいえません。そのため、清算的側面の財産分与では、不動産取得税は課税されないとされています。

しかし、離婚における財産分与でも、他の意味合いがある場合は「取得」と解され課税されます。具体的には以下の場合です。

  • 扶養的側面として財産分与を行う場合
  • 慰謝料的側面として財産分与を行う場合

なお、その他にも、不動産を取得すれば登録免許税や固定資産税などが課税されます。

※固定資産税とは、毎年1月1日現在の土地に、固定資産(家屋及び償却資産)の所有者に対し、所在地の市町村が課税する税金です。

ワンポイントアドバイス
「贈与税」も「不動産取得税」も一律に課税されるわけではなく、財産分与の意味合いで課税される場合とされない場合に分かれます。また、「贈与税」の場合は、財産分与の割合でも課税の有無が分かれます。
専門的な知識も必要となるため、不安な方は早めに弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

財産分与を渡す場合には、税金の落とし穴に注意!

次に、離婚における財産分与により「財産を渡す側」に課される税金はあるのでしょうか。最初に説明した「譲渡所得税」など気になるところです。ここでは、「財産を渡す側」と「譲渡所得税」との関係を考えていきます。

譲渡所得税は避けられない!

譲渡所得税は譲渡した際に生じる「所得」に対して課税されるものなので、離婚における財産分与には当てはまらない気もします。しかし、ここで注意すべきは、離婚における財産分与として無償で財産を渡した場合も「譲渡所得税」が課税されるということです。

そもそも、所得税法の考え方では、財産の所有により発生し蓄積された利益も「所得」とします。このような「所得」に対しては、財産が所有者のもとから離れる時に「譲渡所得税」にて精算することになっているからです。

なお、離婚における財産分与の収入金額とは、「分与時の土地や建物などの時価」となります。

「譲渡所得税」を支払う必要がない場合とは?

ただし、「譲渡所得税」は課税されますが、「譲渡所得」がない場合は税金を支払う必要がありません。

「譲渡所得」の計算方式

 収入金額 ―(取得費 + 譲渡費用)― 特別控除額 = 「譲渡所得」
収入金額とは「分与時の土地や建物などの時価」なので、これらの不動産を最初に取得した金額の方が高ければ、「譲渡所得」自体がマイナスとなり、課税されません。つまり、購入時よりも価値が減っている場合は課税対象に該当しないのです。

「マイホームを売った時の特例」は節税対策にもなる! 

不動産の価値が上がっているなどの事情で、「譲渡所得税」が課税される!と肩を落とした人に朗報です。節税対策にもなる「マイホームを売った時の特例」をここでは紹介します。

マイホームを売った時の特例

居住用財産であるマイホームを売った時は、所有期間に関係なく「譲渡所得」から特別控除ができる特例があります。控除額は最高で3000万円となります。

特例を適用されるための要件は以下となります。

  • 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること
  • 売った家屋や敷地について、他の特例の適用を受けていないこと
  • 売った年の前年及び前々年にこの特例又はマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例、マイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと
  • 売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと

注意すべきは、適用要件の中に「夫婦」でないことが挙げられているため、離婚後に財産分与を行う必要があります。なお、別荘などのように主として趣味、娯楽又は保養のために所有する家屋については適用がありません。あくまで居住用財産を分与する場合となります。

参考リンク:国税庁

別居していても、要件を満たせば「特例」の適用あり!

離婚に際して、以前から別居している場合もあります。
このように、現在住んでおらず過去に居住していた場合にも、以下の2つの要件を満たせば、先ほどの「マイホームを売った時の特例」が適用されます。

  • 売った家屋は自分が所有者として住んでいたものであること
  • 自分が住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までにその家屋を売ること

別居の年数にもよるので、適用されるかどうかは、十分に確認が必要です。
参考リンク:国税庁

ワンポイントアドバイス
財産分与として財産を渡す側にも「譲渡所得税」がかかってきます。ただ、「譲渡所得」がないような場合や、特別控除のある特例などをうまく適用すれば、税金を支払う必要がありません。
弁護士などの専門家に速やかに相談することをおすすめします。

財産分与にかかわる贈与税については弁護士に相談

離婚における財産分与では、どの財産をどれくらいの割合で分けるかに目が行きがちです。しかし、分け方によっては、思わぬところで課税対象となり、当初の予測とは異なる事態が起こる可能性もあります。

税金も含めて総合的にみて、どのような財産分与が望ましいのか、弁護士などの専門家に相談することが、円満離婚への第一歩になるのではないでしょうか。

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