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みなし弁済とは?グレーゾーン金利や過払い金請求との関係
この記事で分かること
- グレーゾーン金利とは、利息制限法の上限は超えているが、出資法の上限未満である金利のことです。
- みなし弁済とは、グレーゾーン金利での違法な貸し付けを実質的に有効とする規定です。
- 法改正により、現在はグレーゾーン金利・みなし弁済のいずれも撤廃されています。
法改正後の撤廃により、現在は問題になることはなくなったみなし弁済。しかし、過払い金請求を検討している方などにとっては、グレーゾーン金利との関係性を含め、知っておくべき内容です。
みなし返済にかかわるグレーゾーン金利とは
まずは、みなし弁済と密接なかかわりのある「グレーゾーン金利」について解説します。
利息制限法の上限と出資法の上限の間の金利
グレーゾーン金利とは、2010年に貸金業法が改正されるまで存在していた、利息制限法と出資法それぞれの上限の間の金利を指します。
利息制限法と出資法は、いずれも貸金業者に対して金利の上限を定めている法律です。従来の貸金業法では、利息制限法の上限金利は借り入れした金額に応じて以下のように定められていました。
借入金 | 利息制限法の金利上限(年率) |
---|---|
10万円未満 | 20% |
10万円以上100万円未満 | 18% |
100万円以上 | 15% |
一方で、出資法における上限金利は、29.2%(年率)。つまり、利息制限法における金利上限15~20%と、出資法における金利上限29.2%の間の金利が、グレーゾーン金利となります。
グレーゾーン金利の問題点
出資法の上限である29.2%を超える金利で貸し付けを行った場合、貸金業者には刑事罰(懲役、または罰金)が科せられます。一方で、利息制限法の上限である15~20%を超える利息で貸し付けた場合は、上限を超えた部分の利息に関しては無効となります。
ただし、無効になるとはいっても、利息制限法に違反したところで、出資法違反のように罰則の規定があるわけではありません。そのため、貸金業法が改正される以前は、出資法の上限である29.2%に近い高金利で貸し付けを行う貸金業者が横行していたのです。
本来ならば貸金業者は、利息制限法に則って金利を設定しなければなりません。しかし、出資法を都合よく利用し、高い金利で貸し付けを行っていたことから、白でも黒でもない“グレーゾーン”金利と呼ばれているのです。
みなし弁済とは
みなし弁済は、改正以前の貸金業法で定められていた、貸金業者に著しく有利な規定です。ここからは、みなし弁済について具体的に解説していきます。
グレーゾーン金利を実質的に有効とする規定
みなし弁済とは、本来ならば無効となる利息制限法の上限を超過した分の金利を、一定の条件を満たすことにより、有効なものとみなす規定です。「利息制限法の上限金利を超える金利が無効」とは、上限金利を超過した部分の金利に関しては、契約がなかったものになるということです。
仮に、100万円を25%の金利で借り入れした場合、15~25%の金利分は無効となるため、過去に支払った超過分の金利は元金の支払いに充てられたものと考えます。つまり、利息制限法に則って返済額を計算した場合、すでに元金を完済している可能性があるのです。
元金の支払いを終えているとなると、完済後に利息として貸金業者が受け取っていたお金は、もともと債務者にとっては支払う必要のないお金となります。そのため、完済後に受け取っていた超過利息は、債務者から請求があれば、貸金業者は返還しなければなりません。
ところが、一定の条件を満たすことによってみなし弁済を適用すると、本来ならば債務者には支払い義務がないはずの超過利息が、有効に支払われたものとみなされるのです。そのため、債務者には返還請求をする権利が認められず、貸金業者も超過利息を債務者へ返還する義務がなくなり、完済後に受け取っていた超過利息がそのまま貸金業者の利益となります。
みなし弁済が認められる要件
ただし、みなし弁済を適用するためには、貸金業者側が次の5つの要件をすべて満たさなければなりません。
1.登録の貸金業者であること
「登録の貸金業者」とは、国、または都道府県から正規の貸金業者として認められ、登録を受けている貸金業者のこと。違法に高い金利(出資法違反)で貸し付けを行っているようないわゆる“闇金”などは登録の貸金業者ではないため、みなし弁済が認められていません。
2.貸し付け時に契約書を書面で交付していること
貸金業規制法(改正される以前の貸金業法)17条の内容を満たした書面でなければなりません。
3.弁済を受けたときに受領書を書面で交付していること
弁済とは、借入金を全額返済すること。弁済を受けた際はただちに、債務者に対して貸金業規制法18条の内容を満たした書面を交付しなければなりません。
4.債務者が利息と認識した上で、契約の利息を支払っていたこと
例えば、貸金業者がウソをついたりだましたりして、債務者が利息と理解しないままに契約の金利で利息を払わされていた場合などは、みなし弁済は認められません。
5.債務者が任意で契約の利息を支払っていたこと
任意とは、自分の意思で行うこと。貸金業者が利息の支払いを強要したのでなければ、任意だとみなされます。これらすべての要件を満たすことは難しいように思えるかもしれませんが、貸金業規制法に従って書面を作成し交付すること自体は、特に難しいことではありません。
さらに、貸金業者とお金を借りる側の債務者では、どうしても債務者のほうが弱い立場になるため、「高い利息を払わなければお金を貸してもらえない」と思えば、利息だと認識した上で、支払いを承諾せざるを得ないかもしれません。またそもそも、債務者側が貸金業法について詳しく知らなければ、提示された利息が法律違反であることにすら気づけない可能性もあります。
こうした背景から、貸金業法が改正される以前はみなし弁済を利用し、貸金業者は違法に高い金利の貸し付けで多くの利益を得ていたのです。
みなし弁済と多重債務問題
みなし弁済は、実質的に高金利での貸し付けを認める規定ですから、結果として、多重債務者を急激に増加させる大きな要因となりました。
多重債務とは、いくつもの貸金業者から同時に借り入れを行うことをいいます。みなし弁済により高金利での貸し付けが認められていた状態では、債務者がコツコツと借金を返していったところで、元金がなかなか減っていきません。利息を払っていくだけで精一杯の状況になり、やがては借金を返すために別の貸金業者から借金をするようになります。
返せないほど借金が膨れ上がった債務者は、厳しい取り立てなどで精神的にも追いつめられ、自殺という最悪の選択をすることも。多重債務は社会問題にまで発展し、2006年に最高裁で実質的にみなし弁済を認めない判決が下されたことをきっかけとして、貸金業法の改正が進められました。
改正貸金業法では、出資法の上限金利が利息制限法と同じ上限金利にまで引き下げられ、グレーゾーン金利が廃止されました。それと同時にみなし弁済の規定も廃止され、2010年に改正貸金業法が完全施行されたことで、2010年以降の借り入れでグレーゾーン金利やみなし弁済が問題になることはなくなっています。
みなし弁済と過払い金請求の関係
現在、グレーゾーン金利やみなし弁済は廃止されていますが、過払い金請求を行う場合には、いずれも重要なポイントとなります。
払い過ぎた利息は返還請求で取り戻せる
2010年の改正貸金業法の施行により、貸金業法が改正される以前にグレーゾーン金利で借り入れを行っていた方、みなし弁済を適用されていた方は、払い過ぎた利息を取り戻せる可能性があります。
実際に支払った利息が、利息制限法の上限金利に則って計算し直した利息を超えている場合、超過分に対して貸金業者へ返還請求を行うことを、「過払い金請求」といいます。
過払い金が発生しないケースも
過払い金の請求ができるのは、あくまでも貸金業法改正以前のグレーゾーン金利で借りた借金がある方のみ。法改正後に借金をした方にはそもそもグレーゾーン金利の適用がないため、過払い金自体が発生しません。
また、過払い金の返還請求には完済した時点から10年の時効があるため、時効により権利が消滅している場合は、たとえ過払い金があっても請求を行えません。
加えて、まだ返済が完了していない借金に対して過払い金請求を行う場合、「債務整理(法律に則って借金を減らしたりなくしたりすること)」の扱いとなり、一定期間新たなクレジットやローンの契約ができなくなることも知っておきましょう。
みなし返済など借金問題の解決は弁護士へ相談
過払い金請求は、すでに完済した借金に対しても行うことができますが、例えば、借入先が倒産してしまっている場合などは、返還請求自体が行えません。また、過払い金請求には貸金業者と直接の交渉が必要ですが、交渉時に大きく減額されることも少なくありません。
「時間とお金をかけたのに、1円も戻ってこなかった……」といった事態に陥らないためにも、過払い金請求のメリット・デメリットをよく把握した上で、請求を行うべきか否かも含め、弁護士などの専門家へ相談するのがいいでしょう。
また、現在借金問題に悩まされている方は、弁護士に相談すれば貸金業者による厳しい取り立てもやみますし、借金返済に向けた具体的な解決策が見い出せます。お金の問題はなかなか身近な人には相談しづらいことだからこそ、1人で悩みを抱え込んでしまわず、まずは専門家へ相談してみましょう。
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